「リースバック」の仕組みとは?「リバースモーゲージ」とはどう違う?

「リースバック」の仕組みとは?「リバースモーゲージ」とはどう違う?

人生はなにがあるかわからないものであり、予期せぬトラブルによって、まとまったお金が必要になることもあります。
しかしトラブルを解決するために、新たに借金をすることは避けたいと考える方も多いことでしょう。
そのような方には、「リースバック」の利用がおすすめです。
この記事では、リースバックとはなにか、利用するメリット・デメリットやリバースモーゲージとの違いなどについて解説します。

リースバックの仕組みとは?

リースバックの仕組みとは?

リースバックは資金調達方法のひとつであり、売却した不動産を賃貸物件として借り、住み続ける方式を指します。
「セール・アンド・リースバック」とも呼ばれ、セール(売却)とリースバック(借り直す)がセットとなっていることが特徴です。
不動産のリースバックの仕組みは、戦前のアメリカで生まれたといわれています。
日本では1960年代に開始されましたが普及せず、注目され始めたのは2010年以降のことです。
現在では、家を活用した資金調達方法として、後述する「リバースモーゲージ」とともに広がりつつあります。

リースバックの流れ

リースバックを利用しようと決めたら、まずはリースバックに対応している不動産会社などのリースバック業者を探します。
業者が見つかったら家を売却しますが、売却方法は一般的な仲介ではなく「買取」です。
リースバック業者が買主となる売買契約を締結し、売主はリースバック業者から売買代金を受け取ります。
ケースバイケースではありますが、リースバックの申し込みから売買代金の振り込みまで、半月~1か月程度です。
その後、リースバック業者と売主との間で、売却した家に対する賃貸借契約を締結します。
買主(リースバック業者)が貸主に、売主が借主になるのです。
賃貸借契約を結んだら、売主は借主として、家賃を支払いながら売却した家で暮らします。
リースバック業者によっては、売却した家をあらためて買い戻すことも可能です。
将来お金を貯めて家を買い戻したい方は、買い戻しができる業者を選び、売買契約時に特約をつけるといった対応をとりましょう。

リースバックの利用に向いているケース

リースバックを利用すると、家に住み続けながら、まとまったお金を手にすることができます。
そのため、住みなれた家から引っ越さずに金銭面の都合をつけたい方におすすめの方法です。

●老後の資金としてまとまったお金がほしいが、最後まで自宅で暮らしたい
●住宅ローンの支払いが難しく、自宅を手放したいが、自宅を売ったことを周囲に知られたくない
●一時的にまとまった資金が必要だが、いつか買い戻したい
●自宅の売却後も生活環境を変えたくない、もしくは事情があり引っ越しができない


上記のようなケースでは、リースバックのメリットを感じやすいでしょう。

リースバックのメリット・デメリットとは?

リースバックのメリット・デメリットとは?

では、リースバックにはどのようなメリット・デメリットがあるのでしょうか。
リースバックのおもなメリット・デメリットは、次のとおりです。

リースバックのメリット

リースバックの大きなメリットは、売却後も住み慣れた家で暮らせることです。
自宅を売却すると、近隣住民の噂にのぼったり、引っ越しによって子どもが転校を余儀なくされたりします。
長く住み続けていて愛着がある場合は、年齢を問わず喪失感を抱くことでしょう。
リースバックであれば、売却の事実が表に出ることなく、同じ家で引き続き生活を送れます。
同じ家で暮らせるものの、不動産を所有するリスクや負担がなくなる点も、リースバックのメリットです。
とくに、毎年支払っていた固定資産税や都市計画税の納付が不要となる点は、金銭面で大きなメリットになるでしょう。
このほか、資金調達のために新たな借金をする必要がない点や、買い戻せる可能性がある点なども、リースバックのメリットです。

リースバックのデメリット

リースバックのデメリットとしては、売却価格が相場よりも安くなりやすい点が挙げられます。
リースバックでの売却価格の目安は、相場の6割~9割です。
まとまった金額を得るためにリースバックの利用を検討している方にとっては、大きな懸念材料となるでしょう。
その一方で、月々の家賃や買い戻し時の金額は相場より高くなる傾向にあります。
リースバックでは家に住み続けることができますが、所有権はリースバック業者にあり、これまでと同様の使い方ができなくなる可能性がある点もデメリットです。
リースバック後の家はあくまでも賃貸物件であるため、ほかの賃貸物件に入居するときと同じように、入居にあたってのルールが定められることがあります。
リフォームなども貸主であるリースバック業者の許可を得る必要があり、無断でおこなうことはできません。

リースバックを利用する際の注意点

リースバックは、家を活用した資金調達方法です。
しかし仕組みをよく理解せずに利用すると、十分なお金を得られずに家を手放すことになるかもしれません。
リースバックの利用時にとくに気を付けたいポイントが、契約内容です。
売買金額や買い戻しの金額だけでなく、賃貸借契約の初期費用の金額、契約の期間や種類などを確認しておきましょう。
賃貸借契約の種類には「普通借家契約」と「定期借家契約」があり、契約期間満了後に更新可能な「普通借家契約」を結ぶケースが一般的です。
万が一「定期借家契約」を結んでしまうと、契約期間満了後に更新ができず、家から出て行かなくてはなりません。
ただし定期借家契約でも貸主の合意があれば再契約ができるため、再契約の可否も確認すると良いでしょう。
またリースバックは、住宅ローンを完済しているケースもしくは売買代金で完済できるケースでないと利用できません。
売買代金で完済する場合、手元に残るお金が少なくなるため、十分な資金調達がかなわない可能性があります。

リースバックとリバースモーゲージの違いとは?

リースバックとリバースモーゲージの違いとは?

ここまでリースバックについてご説明しましたが、リースバックとよく似た言葉に「リバースモーゲージ」があります。
どちらも家を活用して資金調達をする方法であり、「リ」から始まるカタカナ語で言葉としての印象も良く似ているため、どちらがどちらか迷ってしまう方も多いのではないでしょうか。
リースバックもリバースモーゲージも、提供する業者によって詳細が異なりますが、ここでは一般的な両者の違いを解説します。

リースバックとリバースモーゲージの違い:仕組み

リバースモーゲージとは、自宅を担保に入れて、お金を借りる資金調達方法のことです。
利用者の死後、遺族が一括返済をするか、業者が利用者の自宅を売却するかして、借り入れ金を清算します。
リースバックではまず家を売却するのに対し、リバースモーゲージでは利用者の存命中は家を売却せず、家を担保にしてお金を借り入れる点が両者の大きな違いです。
そのため、リバースモーゲージでは家の所有権を持ったままお金を得られます。

リースバックとリバースモーゲージの違い:お金

先述のとおり、リースバックで得たお金は売買代金、リバースモーゲージで得たお金は借り入れ金です。
そのため、リースバックで得たお金の利用には制限がありませんが、リバースモーゲージで得たお金の用途には制限があり、事業や投資には使えません。
またリースバックのお金の受け取り方は一括のみ、リバースモーゲージでは一括と分割から選べる点も、お金に関する両者の違いとして挙げられます。

リースバックとリバースモーゲージの違い:対象物件

これまでリースバックで自宅を売却するケースのみをご説明しましたが、リースバックは自宅だけでなく、所有する事務所や店舗、工場などでも利用可能です。
一方で、リバースモーゲージのおもな対象は一戸建て住宅であり、自宅であってもマンションは対象外であるケースが少なくありません。
また住宅ローンが残っている物件の場合、リースバックは売買代金で住宅ローンを完済できるのであれば利用可能ですが、リバースモーゲージは利用できません。

まとめ

リースバックとは家を活用した資金調達方法のことで、売却した家を借りて住み続ける方式をいいます。
引っ越しが不要であることや、まとまったお金を得られることなどが、リースバックのメリットです。
よく似た言葉にリバースモーゲージがありますが、リバースモーゲージは家を担保としてお金を借り入れる方法です。