国外にいる非居住者でも不動産売却は可能?手続きの流れや税金の種類を解説

国外にいる非居住者でも不動産売却は可能?手続きの流れや税金の種類を解説

海外赴任などで日本国内にいない非居住者でも、日本国内にある不動産を売却することは可能です。
しかし、日本で不動産売却をする場合と比べると手続きが少し複雑になるため、流れをしっかり理解しておく必要があります。
そこで今回は、海外から日本国内の不動産を売却するときの流れや必要書類、課税される税金について解説します。

非居住者でも不動産売却は可能!通常の不動産売却と異なる点とは

非居住者でも不動産売却は可能!通常の不動産売却と異なる点とは

海外移住や転勤などで、海外を拠点にしている方も多いでしょう。
たとえ日本に住んでいなくても、非居住者として海外から日本国内の不動産を売却することは可能です。
ここでいう非居住者とは、日本国内に住所がなく、海外在住期間が1年以上ある方のことを指します。
海外移住に限らず、1年を超える留学なども非居住者の対象です。
非居住者は住民票を取得できないため、自身が売買手続きに立ち会えない時は代理人を立てなければなりません。
通常の不動産売却とは異なるステップで不動産売却を進めることになるので、流れをしっかりと理解しておくことが大切です。

非居住者が不動産売却するときの流れ

非居住者が不動産売却するときの流れ

ここからは、非居住者が不動産を売却するときの流れについて解説します。

①非居住者に対応する不動産会社を探す

まずは、非居住者の不動産売却に対応している不動産会社を探します。
海外から不動産売却する場合、国内の諸手続きは不動産会社が主体となっておこないます。
トラブルを避けるためにも、査定を依頼する際は、事前に海外在住である旨を伝えておきましょう。
また、法的な手続きは司法書士に依頼することになるため、不動産会社とあわせて司法書士も探しておくとスムーズです。
ただし、司法書士であればどこでも良いわけではなく、海外からの手続きに対応している事務所を探す必要があります。

②必要書類を準備する

続いて、不動産売却に必要な書類を準備します。
非居住者が不動産を売却する際は、通常の必要書類に加えて以下の書類を揃えなければなりません。
在留証明書
在留証明書とは、どこに住所を有しているかを証明する書類で、住民票の代わりになります。
申請は日本大使館や領事館でおこない、申請時にはパスポートなどが必要です。
発行までに日数を要する場合もあるので、余裕を持って手続きを進めましょう。
サイン証明書
サイン証明書は、サイン(署名)が本物であることを証明するための書類です。
日本国内で使用される印鑑証明書に近い役割を持っています。
サイン証明書も在留証明書と同様に、日本大使館や領事館で申請します。
単独型と貼付型の2種類がありますが、不動産売却では「貼付型」をご用意ください。
代理権委任状
不動産売却における売買契約締結時などには、原則として本人の立ち会いが必要です。
手続きにあわせて帰国するのが難しい場合は、代理権委任状を準備しなければなりません。
代理権委任状を提出すれば、不動産売却の手続きを司法書士などに代行してもらえます。
代理権委任状に記載する項目は、主に以下の5つです。

●委任者
●受任者
●委任権の内容
●不動産情報
●委任日


司法書士に限らず、家族や親族が手続きを代行するときにも代理権委任状が必要です。

③売却活動をおこなう

次に、不動産会社と媒介契約を結んで売却活動をおこないます。
購入希望者が現れたときには内覧をおこないますが、当日は不動産会社の担当者が対応します。
非居住者は内覧に立ち会えないため、事前にルールを決めておくと良いでしょう。
たとえば内覧の際に、購入希望者から値下げ交渉を受けることがあります。
「いくらまでなら値下げしても良い」という最低ラインを決めておくと、交渉がスムーズに進むでしょう。

④売買契約を結ぶ

交渉がまとまったら、売買契約の締結に進みます。
売主も立ち会う必要がありますが、帰国が難しい場合もあるでしょう。
その際は、司法書士や親族など代理人を立てて手続きをおこないます。

⑤代金を受け取り物件を引き渡す

決済および物件の引き渡し時も、原則として売主本人の立ち会いが必要です。
帰国するのが難しい場合は、立ち会いも代理人に任せることになります。
その際は、代理権委任状を忘れずないようご注意ください。

⑥確定申告をおこなう

不動産売却により利益が生じたら、確定申告をおこなう必要があります。
これは、国外にいる非居住者でも同じです。
確定申告の流れは次項にて解説します。

非居住者による不動産売却でかかる税金

非居住者による不動産売却でかかる税金

非居住者が日本国内にある不動産を売却すると、買主により源泉徴収がおこなわれます。
まず、源泉徴収の相当額(売買代金の10.21%)を差し引いた金額を、売却代金として買主から受け取ります。
そして買主は、源泉徴収として差し引いた分を税務署へ納付するのが基本的な流れです。

源泉徴収がおこなわれる理由

本来であれば、日本国内でおこなわれる不動産売買について、買主は源泉徴収する必要はありません。
不動産売却によって利益が発生した場合は、売主が申告・納税するのが一般的です。
なぜ非居住者との取引では源泉徴収が必要なのかというと、申告漏れを防ぐためです。
ただし、以下の条件をすべて満たす場合は、源泉徴収をおこなう必要がありません。

●個人の買主が自己もしくは親族の居住用として購入したとき
●売買代金が1億円以下のとき


たとえば、個人がマイホームとして物件を購入し、物件価格が1億円以下であれば、源泉徴収は不要です。

不動産売却でかかる税金の種類

不動産売却時には、仲介手数料といった諸費用以外に税金も発生します。
資金不足を防ぐためにも、不動産売却時に発生する税金の種類と計算方法を確認しておきましょう。
譲渡所得税
不動産売却で得た利益(譲渡所得)には、譲渡所得税が課されます。
ここでいう譲渡所得とは、売却代金すべてではなく、以下の計算式で求めた金額です。
譲渡所得=売却価格−所得費−譲渡費用−特別控除
そして譲渡所得には、物件の所有期間に応じてそれぞれ以下の税率が適用されます。

●短期譲渡所得(5年以下):39.63%
●長期譲渡所得(5年超え):20.315%


なお、所有期間が10年を超えるマイホームの売却ではさらに税率が軽減され、6,000万円以下の部分は税率が14.21%、6,000万円超えの部分は20.315%となります。

3,000万円の特別控除の適用は受けられる?

不動産売却時には、一定の要件を満たすことで「3,000万円の特別控除」を受けられます。
3,000万円の特別控除とは、所有期間の長短に関係なく譲渡所得から最高3,000万円まで控除ができる制度です。
非居住者の不動産売却も、以下の要件を満たしていれば控除を適用できます。

●住まなくなった日から3年が経過する日の属する年の12月31日までに売却すること
●売却した年の前年および前々年にマイホームの買換えやマイホームの交換の特例の適用を受けていなこと
●買主と売主が特別な関係(親子や夫婦など)でないこと


詳細は国税庁のホームページに記載されているため、あらかじめ確認しておくと良いでしょう。

確定申告のポイント

先述したように、不動産売却で利益を得たら確定申告が必要です。
日本で確定申告をするには「所得税・消費税の納税管理人の届出書」を提出し、納税管理人を立てる必要があります。
納税管理人とは、非居住者に代わって確定申告の手続きをおこなう法人や個人のことで、親族や知人を指定することも可能です。
確定申告書の作成や税金に関する相談もしたい場合は、税理士に依頼すると良いでしょう。

まとめ

国外にいる非居住者でも、日本国内にある不動産を売却することは可能です。
ただし、通常の不動産売却とは異なる手続きが必要なため、非居住者の不動産売却に慣れた不動産会社を探すようにしましょう。
また、不動産売却後に確定申告をする際は、納税管理人を立てなければならない点にもご注意ください。